当店の丸粒プレミアム米について
「この醤油、高~~~い!」「あのお米は、普通の3倍の値段よ」
「そこのお味噌、良い値段するわね」
私は、東京で最も古い米菓(あられ)メーカーのひとつである古川山荘の店主敬太と申します。
日本人にとっての食文化の象徴といえば「ごはん」「お米」です。 伊勢神宮の方に、お米=「イネ」の語源は「命(いのち)の根(ね)」だ、と教えられました。
神様が大和の国(日本の昔の呼び名)を治めるのに、三種の神器と一緒に、 手にしていたのが「イネ=お米」だったと言われています。 「これ(イネ)で、そこの民を繁栄させなさい」ということだったのです。
神代の昔以来、お米は発酵技術と結びつき、お酒や味噌など、日本人の 豊かな食生活と健康に深く関わり、発展し、食文化を育んできました。
今でも、お酒・醤油・味噌などは、大量生産による廉価な商品が出回る一方で、 昔ながらの製法や質の高い原料で手間暇かけて作られた、こだわりの本物が 好事家の人気を集めています。
ホンモノを味わいたいとき、、、現在では、インターネットの普及等と相まって若干の手間と少々の出費があれば、本物を手にし、堪能することができます。
が、日本の食文化の中で、廉価な商品が広まる一方、本来の作り方、所謂「本物」が、 絶滅の危機に瀕している食べ物があります。
意外と思われるかもしれませんが、それが「米菓=あられ、おかき」なのです。
突然ですが、皆さんは、あられとお煎餅の違いをご存知ですか?
丸くて大きいのがお煎餅、細かいのがあられ、と思っている方も多いですが、 実際は「原料」の違いであり、それは「発祥と文化」の違いに行きつきます。
「原料」の違い、即ち、あられは「もち米=お餅」から作られ、お煎餅は「うるち米の粉=我々が普段食べる "ごはん" 」から作られます。
そして「発祥と文化」の違いは、そのまま「もち」と「ごはん」の"文化"の違い になります。
「もち」は "ハレ" であり "神事" のものです。お祝いのとき、節目の時、 神様に感謝しお供えするものが「お餅」です。代表的なものが「鏡餅」でしょう。
あられ・おかきは、神様にお供えしたお下がりを、例えば、鏡餅が堅くなったものを、 お裾わけとして頂いて、細かくして焼いたり揚げたりしたのが、あられ・かき餅なのです。
五穀豊饒に感謝して、収穫のお祝いにお餅を食べる風習が、全国にありますが、 そのお餅を使ってあられ・おかきを作るのが発祥と言われ、奈良時代の文献に すでに登場しています。
神事のときの、一番美味しいお米を使うのが、あられ・おかきの原点です。お米やお餅の「旨み・甘み」が味わえるのが、あられ・おかきの本当の美味しさなのです。
現在、百貨店からコンビニ・スーパーに至るまで、あられ・おかきは、多種多様な 味付けで販売されていますが、その殆どは「クズ米」「破砕米」を使っていることを
知る人は少ないでしょう。
本来 "丸粒" のお米をついて「お餅」にして、それを乾かすのが、あられ・おかきな ですが、現在は、どうせ "丸粒" の形は残らないから、安い「クズ米」「破砕米」を使います。数年前の「事故米騒動」で、有名な米菓メーカーが何社も「食べられるクズ米以下」の原料を使っていたことも明らかになりました。
また、「クズ米」ですと、お米やお餅の「旨み・甘み」が味わえなくなりますが、 濃い醤油などで味付けすれば、お米本来の味が引き出せなくとも、安く作れます。 安く作ることで、あられ・お煎餅は、日本人に広く親しまれるようになりました。
しかし、安さと引き換えに「本来の神事に関わる、一番美味しい丸粒のお米で作るあられ・おかき」は、どんどん少なくなっていきました。
いつしか「クズ米」で、お米の旨みを引き出さない只の辛いお菓子、があられ・ おせんべいの代名詞になってしまいました。それは、加工でんぷんを固めたスナックを 「エビせんべい」と呼び、小麦粉で作るポテトチップの代用品のポジションを担うように変わっていきました。
食生活は「今」の文化です。過去の発祥や風習とは、無関係に変わっていきます。 乳製品や肉食などは、ほんの150年前は、今ほど身近でなかったでしょう。米菓も時代に合わせて変わっていくものです。それは、味噌や醤油もそうです。
しかしながら、本来の製法、本当の魅力を守ったものも楽しめた上で、それらを知って上で、手に入れやすい商品を味わえなければ、せっかくの食文化が楽しくないのではないでしょうか?
古川山荘のあられは、「クズ米」や「破砕米」は一切使いません。丸粒のもち米にこだわります。和菓子屋さんやお餅屋さんより、はるかに高価な「お餅」を販売しているのも、丸粒のしかも "プレミアム" な「もち米」にこだわっている証です。
丸粒でも"プレミアム"、即ち「丸粒プレミアム米」は、普通のお米としても最高級のものです。
それは、栽培方法、そして、土づくり、に行きついています。農薬や化学肥料は一切使わない。そして、化学肥料だけでなく有機肥料など一切の肥料も使わない、まさに自然の土の力、大地の力だけで育てるお米作りを続けています。
たかだか米菓に、なぜそこまでするか? 丸粒の形など残らないのに。 その原点は、神様に供える感謝の気持ちのこもったお米から作る、というあられ・おかきの本来の作り方を貫きたいからです。
米菓市場は、前段に述べたように、大衆的なものに変容していきました。 それは、ある面でとても良いことだと思います。しかし一方で、本来のあられ・ おかきづくりをしてきた当店の商品が、全然違うものになっていったのです。